ENHYPEN1 のカバー曲「A Kind Of Magic – Coke Studio Session」(以降「A Kind Of Magic」と略)について、楽曲構成やタイトル・歌詞の意味/解釈など、カバー曲にまつわる様々な情報を整理しまとめておきます。
この記事をご覧になった方が曲への理解度が高まり、ENHYPEN による A Kind Of Magic をより楽しんで聴かれると嬉しいです。
A Kind Of Magic の基本情報
「A Kind Of Magic」は、「Coke Studio」のキャンペーンソングとして2022年6月8日より公開された、イギリスの世界的ロックバンド Queen の楽曲です。メンバー全員でカバーしています。
A Kind Of Magic – Coke Studio Session
🗓2022年6月8日ENHYPEN Official YouTube
公式からの案内について、参考までにリンクを貼っておきます。
「Coke Studio」は、コカ・コーラが手掛ける新しい音楽体験を提供するプラットフォームで、2022年夏のキーメッセージは『Coke×Music. 夏の魔法を刻め。』でした。
YouTube 公式チャンネルでも様々なアーティストが「A Kind Of Magic」をカバーしていますので、お時間あるときに聴き比べてみてはいかがでしょうか。
少しかすれ声で落ち着いた雰囲気の、Griff さんの「A Kind Of Magic」が好みです。
TRI.BE は ENHYPEN より後輩にあたるグループ(2021年2月19日デビューなので、ほぼ同期)のようですが、これぞ K–POP2 というアレンジで目にも楽しいステージです!
Queen による「A Kind of Magic」
「A Kind of Magic」は、1986年3月17日にリリースされた Queen の シングル曲(シングルLP盤)で、同じ年に発売された12枚目のアルバム「A Kind of Magic」(LP盤)の A面 2曲目にも収録されています。
比較のため、Queen 大先輩の公式 MV3 へのリンクを貼っておきます。
Queen – A Kind of Magic(公式ビデオ復元)
🗓2008年8月1日Queen Official
MV にはアニメーションが使われており、なんともコミカルな映像になっています。ボーカルのフレディが魔法使いで、他のメンバーが廃劇場にたむろする浮浪者という設定のようです。
この曲は、ファンタジー・アクション映画「ハイランダー 悪魔の戦士」(原題:Highlander、以降「ハイランダー」と略)で最後のエンド・クレジット部分に使うため作曲されました。
映画音楽として元々は壮大でゆったりとしたテンポだったようですが、シングル曲で発表する時にライトで親しみやすい曲調へ変化させたそうです。
「ハイランダー」ってどんな映画?
ここで、歌詞を理解するための関連情報として、映画の内容についても少し触れておきます。
タイトルとなっている「ハイランダー」は、スコットランドのハイランド地方における勇猛な戦士(高地の人)を指しています。
映画では主人公のコナー・マクラウドがスコットランドの出身という設定ですので、主人公を指す言葉でもあります。
スコットランドといえば、スカートに似た「キルト」と呼ばれるチェック柄の民族衣装があります。最近ではヒスンが「Brought The Heat Back」でプリーツ状のチェック柄スカートを着用しており、ハイランダーを連想させますね。
コナーは斬首されない限り死なない「不死の者」の1人で、世界には同じような戦士が存在し、いつか訪れる「集合の時」に殺し合う運命にあるようです。
黒い騎士と呼ばれる他部族を率いるクルガンが敵役であり、数百年の時を経て最後の戦いに挑みます。生き残った者には「究極の宝」が与えられる、というストーリーです。
途中、コナーは人間の女性であるヘザーを愛し妻にしますが、やがて老衰で死別を迎えます。
不老不死であるがゆえに深い悲しみや苦しみを抱き続けることになり、彼の厳しい宿命に考えさせられることの多い作品です。
不老不死というキャラクター設定が、ENHYPEN のコンセプトであるヴァンパイアと通じるものがありますね。
A Kind Of Magic の楽曲構成・パート分け
「A Kind Of Magic」の楽曲構成とパート分け(歌割り)を図にまとめてみました。
イントロでのフィンガースナップ(指鳴らし)のような音が楽しげなテンポで始まる、ロック調の楽曲です。
構成としてもメロディーが変則的で、1番にあったBメロが2番には配置されないなど、形にとらわれない自由な雰囲気があります。
ENHYPEN のカバーでは原曲の一部が省略されていたり、アウトロはCメロ部分の繰り返しを使ったり、要所要所でアレンジが加えられています。
パート分けは、意外にもソンフンとソヌが同率で一番多いです。
続いてヒスンが多く、他のメンバーは同じくらいの比率になっています。
パート配分 |
---|
ソンフン・ソヌ > ヒスン > ジェイク・ジョンウォン・ニキ > ジェイ |
A Kind Of Magic のタイトル・歌詞の解釈
著作権の都合上、「A Kind Of Magic」の歌詞全てを書き出して説明することは難しいため、ポイントを絞って自分なりの解釈を綴っておきます。
タイトルは「魔法のようなもの」という意味
まず、タイトルに含まれる a kind of … は「一種の~、~のような」と、後に続く名詞(単数形)を形容する言葉(形容句)です。
magic には「魔法、不思議な力、手品」といった意味があるため、A Kind Of Magic で「魔法のようなもの」と訳することができます。
It’s a kind of magic
(作詞: Roger Taylor | 1986年 Queen の「A Kind of Magic」から引用)
タイトルの語句を含み、楽曲全体に散りばめられている歌詞を引用させていただきました。“It’s a kind of magic”(それは一種の魔法さ)という意味です。
このフレーズは「ハイランダー」ってどんな映画?の節でご紹介した映画の中で、主人公のコナーが自分を「不死の者」と表現する台詞からきているようです。
単純に magic と聞いたときに輝かしく明るい『神秘的な力』を想像しがちですが、この映画から連想する magic には禍々しく暗い『呪術』(呪い)に近いものがあるのではないかと考えています。
最後の戦いの向こうにあるもの
This rage that lasts a thousand years
(作詞: Roger Taylor | 1986年 Queen の「A Kind of Magic」から引用)
Will soon be gone
サビ部分の最後に綴られた歌詞を引用させていただきました。1番はジョンウォン、2番はジェイのパートになっています。
“This rage that lasts a thousand years”(千年続くこの激情も)“Will soon be gone”(じきに静まるだろう)という意味です。
rage には「激しい怒り」の他に、「自然の猛威・大荒れ、激しい感情(欲望・熱望・渇望)」の意味があります。
last は動詞として「続く・継続する、もちこたえる」という意味になります。
映画の中にコナーの師としてスペインの不死者フアン・ラミレスが登場しますが、彼は2347年前に生まれた(!)と明かすのです。なんとも壮大なスケールですね。
「不死の者」がいつから存在していたのか、なぜ存在するのかは明らかになっていませんが、『千年続く』という歌詞に繋がるエピソードです。
2番の歌詞は “This rage” の部分が “This life”(この命)だったようなのですが、本家の MV でも rage と歌われています(ジェイも rage の方で歌っています)…ネタバレに繋がるので自主規制でしょうか。
The waiting seems eternity
(作詞: Roger Taylor | 1986年 Queen の「A Kind of Magic」から引用)
The day will dawn of sanity
1番Bメロの歌詞を引用させていただきました。ジェイクとソンフンのパートになっています。
“The waiting seems eternity”(待つことが永遠のように思える)“The day will dawn of sanity”(勝利は健全な夜明けをもたらすだろう)という意味です。
the day は直訳すると「その日」という意味ですが、『勝負の一日』と捉えると「勝利」と置き換えて意訳することができます。
sanity は「正気、健全さ・分別」を意味する名詞で、身体的や精神的に正しい状態を表現する言葉です。
映画のストーリーから考えると、最後の戦いである「集合の時」に勝利を収めることで、「不死の者」に課された禍々しい宿命を断ち切ることができると表現しているようです。
“One”(ひとつ)にこだわる理由
One dream, one soul, one prize
(作詞: Roger Taylor | 1986年 Queen の「A Kind of Magic」から引用)
One goal, one golden glance of what should be
1番Aメロ、最初の歌詞を引用させていただきました。ニキのパートです。
“One dream, one soul, one prize”(ひとつの夢、ひとつの魂、ひとつの褒美)“One goal, one golden glance of what should be”(ひとつの目的地、ひとつの黄金に輝くあるべき姿)という意味です。
あまり聞き慣れない単語として、prize は「賞、褒美、(努力・競争などの)目的物」、glance には「一見、閃光・きらめき」という意味があります。
すぐ後に “It’s a kind of magic” と続くため、これら5つの対象が「魔法のようなもの」なのかと想像したりしましたが、映画では「不死の者」であるコナーが・現実では Queen がグループとして求めるものを指しているのではないでしょうか。
one には「ひとつの、ひとまとまりの」から派生し、「同一の、同じの」と形容することもできます。
コナーは愛する相手(人間)と、Queenはメンバー間で同じ『夢・魂・褒美・目的地・あるべき姿』を共にしたいという想いを表現しているのかもしれません。
人間と異なる時間軸を生きているコナーは、愛する妻ヘザーと同じ夢や目標を共有するのが難しかったのでしょう。子を生すことを愛の結晶(prize)とするなら、何も形にできず、ただ愛する人を失うのは相当な苦痛であったと想像します。(「不死の者」は『子孫を残すことができない』という設定より)
There can be only one
(作詞: Roger Taylor | 1986年 Queen の「A Kind of Magic」から引用)
1番サビで登場する歌詞を引用させていただきました。ソヌのパートになっています。
“There can be only one”(ただひとつしか存在しえない)という意味です。映画のストーリーになぞらえると「生き残れるのはただ一人」とも訳せます。
Queen はグループとして存続の危機に直面していたとも言われており、この曲を通じてヴィジョンや想いを『ひとつに』したのだと思います。
「時の扉」に挑もうとする君、そして僕
The bell that rings inside your mind
(作詞: Roger Taylor | 1986年 Queen の「A Kind of Magic」から引用)
It’s a challenging the doors of time
1番Aメロの歌詞を引用させていただきました。ヒスンのパートになっています。
“The bell that rings inside your mind”(君の心の中で鳴る鐘)“It’s a challenging the doors of time”(それは時の扉への挑戦だ)という意味です。
bell は「鐘・鈴、その音」を表す単語(名詞)です。鐘は昔から人々に時刻を知らせるため、教会や高い塔の上に設置されていました。
映画のストーリーになぞらえると、最後の戦いである「集合の時」が近づいていることを表現しているフレーズなのかもしれません。
This flame that burns inside of me
(作詞: Roger Taylor | 1986年 Queen の「A Kind of Magic」から引用)
I’m hearing secret harmonies
The bell that rings inside your mind
Is challenging the doors of time
同じく2番Aメロの歌詞を引用させていただきました。1行目はソンフン、2~3行目はカバー時に省略されていましたが、4行目はジョンウォンのパートです。
“This flame that burns inside of me”(僕の胸に燃えあがるこの情熱が)“Is challenging the doors of time”(時の扉に挑もうとしているんだ)という意味です。
1番Aメロと同じように “Is challenging the doors of time” は本来 “The bell that rings inside your mind” に掛かっていたフレーズですが、省略されても意味が通るように工夫されています。
心の中で鐘が鳴っていたのは『君』ですが、情熱を燃やしていたのは『僕』であることも興味深いです。
『君』は映画の主人公コナーを指しているとも言えますし、この曲を聴いているリスナーを指しているとも受け取れます。
また、『僕』がボーカルのフレディ個人だとすると、『君』は Queen のメンバーのことも指しているのかもしれませんね。
一緒にこの時代の音楽シーンを切り開いていこう、というメッセージになっていそうです。
A Kind Of Magic にダンスはありませんでした…
調べてみましたが、残念ながら「A Kind Of Magic」にはダンス映像が見当たりませんでした。
2022年10月29日に日本で行われたスペシャルイベントでは、ダンスの振り付けが用意されていたわけではなく、ステージ上で移動するようなパフォーマンスになっていたようです。
A Kind Of Magic の関連情報
ジョンウォンの VLIVE(2022年6月11日)
「A Kind Of Magic」の公開から3日後に行われたジョンウォンの個人 VLIVE4 で話題に挙がっていましたので、次に引用させていただきます。
불토 🔥
(「燃える土曜日 🔥」2022年6月11日)(8′05″~)
Weverse
ジョンウォン 「そうだ、そして皆さん。コカコーラ聞いてみましたか。『A Kind Of Magic』一度聞いてみよう。僕も出た日に聞いたんですが、今回はレコーディングが上手くできたと思います。コカコーラ。正直、次のアルバムを準備する前にこれをレコーディングして 一度聞いてみましょう。最新順、あった。」
(中略)
「そうだ、僕が見たんだけど ここは誰のパートかという気になってる ENGENE の方々がいるのでお教えします。ここをすごく気になっていらっしゃるんですけど、ダブリングする部分。ここ」
「これが “Will soon be, Will soon be, Will soon be” まではソヌさんがずっとやって、ヒスンさんがずっとダブリングしたんです。“gone” でヒスンさんが やる…」
「でもこれは元々この歌より2つのキーがもっと高いんです、原曲は。でも2キー下げたのにすごく高いんです、本当に。元のキーは多分 探してみます。元々、もう少し…何て言えばいいんだろう?もう少し古典的だと言うか。少し…すごく難しい、すごく遅い歌なので すごく難しかったんですが 一度探してみます。これかな?広告が出るね。これで合ってる?」
「そうです、これです。2つのキーが高いんです、元々。元々、もっと長いんだ。歌は。」
「でもこれは本当にリズムが正確に決まっていなくて すごく難しかったんです、レコーディングする時」
2番サビでヒスンとソヌのパートでは、ソヌのヴォーカルにヒスンの歌声を重ねていると明かしてくれています。(正確には、最後の “gone” はヒスンのみのようです)
また、原曲のキーから2つも下げたのに高いと、レコーディングに苦戦したようすが伝わってきます。
ジョンウォンは『すごく遅い歌』と表現していますが、K-POP を聴き慣れている若者にとって、昔のムードあるゆったりした曲・規則性のない曲は慣れるまで時間がかかるのかもしれません。
頑張って表現してくれてありがとう!ENHYPEN らしい「A Kind Of Magic」になっていると思うよ~
「コカ・コーラ ゼロ × ENHYPEN」キャンペーン
コカ・コーラシステム5は、ENHYPEN を起用したオリジナルアイテムを販売促進グッズとして、2022年8月22日からキャンペーンを展開していました。
景品 | 対象商品 | 条件 |
---|---|---|
オリジナルスライダーポーチ (全3種) | 「コカ・コーラ」 「コカ・コーラ ゼロ 」 「コカ・コーラ ゼロカフェイン」 「コカ・コーラ プラス」 | 対象商品を4本購入で1つ |
オリジナルアクリルキーホルダー (メンバー7種・グループ1種の計8種) | 「コカ・コーラ ゼロシュガー」 「コカ・コーラ」製品* | 対象商品を2本購入で1つ |
A賞:オリジナルペアタンブラー(3,000名) | Coke ON対応自動販売機で販売している 「コカ・コーラ」全製品 | Coke ON対応自動販売機で対象製品を購入後、 Coke ONのキャンペーンサイトにアクセスして 景品を選んで抽選 |
B賞:オリジナルデザイン Coke ONドリンクチケット(50,000名) |
* 対象商品は店舗により異なる
景品には「コカ・コーラ ゼロ」を持って、メンバーそれぞれポーズを決めている写真が使われています。
ヒスンの髪色が黒になっているので、「Blessed–Cursed」活動終了後に撮影されたものと思われます。
こうして企業の促販グッズ化されると、ENHYPEN もいよいよ認知されてきたな~と実感が湧きますね。
キャンペーン開始からしばらく経って、近所のスーパーや薬局でもスライダーポーチを見かけることがありました。3種のうち2種しか置いてありませんでしたが、娘のためにコカ・コーラ製品の飲料を購入してゲットした記憶があります。(けど、あまり喜んでくれなかった🥲)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ENGENE6 予備軍の方は、ENHYPEN のカバー曲「A Kind Of Magic」について多少なりともご理解いただけましたでしょうか?
また先輩 ENGENE の方は、私の整理した「A Kind Of Magic」の関連情報について間違いありましたら、ご指摘いただけると助かります。
✨ Special Thanks ✨
アイキャッチ画像:Michaela 様
「ダンスはありませんでした…」のイメージ画像:Mudassar Iqbal 様
埋め込み動画のサムネイル画像:Lucio Alfonsi 様
@ Pixabay
コメント
「A Kind Of Magic」は、作曲の背景に「ハイランダー」という映画があることがわかると、ENHYPEN がカバーすることに意味があると感じられますね😌英語歌詞の曲もこうして表現できるとわかると、さらに世界が広がっていくような気がします🌎